「謹製(きんせい)」という言葉をご存知ですか?あまり気に留めたことのない言葉だと思いますが、もしかすると知らないうちに文字として目にしていることはあるかもしれません。「謹製」という文字が高級な菓子やハムなどの包みに記されているのを見たことはないでしょうか。
また、「拵える(こしらえる)」という言葉を知っていますか?こちらもあまり使うことのない言葉かもしれませんね。
私自身も、日常的に用いられているのを聞いたことはなく、テレビドラマや小説などの中で耳にした、目にしたことがあるという程度です。
「謹製」「拵える」この二つの言葉にはどちらも「作る」という意味があるのですが、もう少し詳しくこれらの言葉の意味と使い方、さらに類語について調べていきたいと思います。
「謹製」の意味とは?
「謹製」の意味は、「心を込め、謹んで(つつしんで)作ること」です。またそのようにして製造された「製品」を指します。多くは食品の製造者などが用いるとされています。
「謹製」の「謹」には「細かく気を配ること」「相手に対して敬意を表すこと」という意味があります。「製」は「作ること」また「作ったもの」をいいます。
「謹製」は、ただ単に作ることではなく、相手のことを敬いながら、細心の注意を払いつつ、心を込めて作り上げること、またそのようにして作られた製品を表します。
「謹製」の使い方
例えば、「謹製」という文字が刻まれた包装の和菓子があったとすると、その和菓子には「お客様のために、心を込めて謹んで作りました」という製造者の思いが込められています。
・こちらの謹製生菓子は弊社の名物となっております
・自社の謹製ハムをぜひお召し上がりください
・このタオルは謹製と表記されているだけあって、とても使い心地が良い
「謹製」は食品に使われるのが一般的ではありますが、食品以外に「謹製」が用いられている製品もみられます。
「謹製」とは製造者側が、その製品を食す、使用する側を敬って用いる言葉です。
「謹製」の類語
「謹製」の類語としては「上製」「真心込めて作る」「精魂込めて作る」などがあげられます。
「上製」とは作りが普通より上等であること、またそのもの、「真心込めて作る」とは嘘偽りなく、誠心誠意を込め作ること、「精魂込めて作る」とはたましいを注ぎ、そのことに打ち込む精神力を持って作ることです。
いずれも「多大なる強い思いを込めて作り上げる」という意味を持つので「謹製」と類語と考えられますが、一般的に「謹製」は製造者が使う言葉とされているので、日常で用いるには「真心込めて作る」「精魂込めて作る」などが良いでしょう。
「拵える(こしらえる)」の意味と使い方
さて、もう一方の「作る」という意味を持つ「拵える」についてもみていきましょう。
「拵える」にはいくつかの意味があるので、こちらは例文ともに、それぞれの意味と使い方を説明していきます。
「拵える(こしらえる)」の意味①
製作する。結果として不本意な物を作ってしまう。
・家族の夕食を拵える
(家族の夕食を作る)
・一軒家を拵える
(一軒家を作り上げる)
・娘の洋服を拵える
(娘の洋服を制作する)
・頭をぶつけてこぶを拵えた
(頭をぶつけてこぶを作った)
「拵える(こしらえる)」の意味②
・出かける前に顔を拵える
(出かける前に化粧する)
・鏡の前で身なりを拵える
(鏡の前で身なりをととのえる)
「拵える(こしらえる)」の意味③
・家を買う頭金を拵える
(家を買う頭金を用意する)
・会社を立ち上げるための資金を拵える
(会社を立ち上げるための資金を調達する)
「拵える(こしらえる)」の意味④
・遅刻の言い訳のために理由を拵えた
(遅刻の言い訳のために嘘の理由を作った)
・彼らが拵えた儲け話に多くの人が騙された
(彼らがもっともらしく作り上げた儲け話に多くの人が騙された)
「拵える(こしらえる)」の意味⑤
・新学期になり、私はたくさんの友人を拵えた
(新学期になり、私はたくさんの友人をつくった)
・彼が愛人を拵えたことを奥さんは知らない
(彼が愛人をつくったことを奥さんは知らない)
「拵える」とは、大まかに捉えると「作る」という意味ですが、作るにも様々な要素が含まれており、「物を作る」「身なりや顔をととのえる」「用意する」「だますための話を作る」「友人や愛人をつくる」などの意味があります。
①の「こぶを拵えた」、④の「言い訳のために理由を拵えた」、⑤の「愛人を拵えた」のように、同じ「作る」でも悪い意味での内容にも「拵える」は使われます。
「拵える」の類語
「拵える」の類語には「作り上げる」「仕上げる」「完成させる」などがあげられます。
「拵える」は日常的に用いることができますが、実際にはあまり耳にすることはないので、「作る」と表現するほうが無難であるかもしれません。
まとめ
「謹製」は製作者が、その製品の受け取り手に対して敬意を表すために用いる言葉であり、「拵える」は普段使いのできる言葉です。
作る側が表現する言葉を考えてみると、それに込められている色々な思いを感じ取ることができるかもしれません。