本来の意味より間違った意味で使われる日本語はいっぱいあります。
「役不足」と「力不足」もそのひとつです。
今回は「役不足」と「力不足」の意味や正しい使い方、違いについて紹介します。
実際に間違って使っている人の割合は、どの位か気になりませんか?
「役不足」と「力不足」の意味と違いは?
役不足と力不足の意味がわからない場合でも違いは一目でわかります。
「役」と「力」が違いますよね。
では、この「役」と「力」にどのような意味があるか見ていきましょう。
【役(やく・えき)】 ・役目、つとめ、職務 ・俳優が演じる人物 ・花札や麻雀の点数で一定の条件をそろえる事
【力(ちから・りき】 ・動物が自分で動いたり、他の物を動かす働き ・能力、力量 ・効き目、効果、効力
少し意味を省略しましたが、何となく違いがあるのはわかりましたか?
つまり「〇不足」の『〇』がわかれば、答えは簡単です。
役不足は、「人(私・あなた)の能力」に「役」が不足しています。
役目(仕事)が人の能力に不足している事=役目が軽すぎて物足りない事です。
力不足は、「人(私・あなた)」の「力(能力・力量」が不足しています。
つまり役目が重すぎてその人の能力では足りない事です。
「役不足」と「力不足」の使い方
元々「役不足」は、俳優が自分にきた仕事に対して不満に感じた時に使う言葉です。
使い方の例として、ベテラン俳優Aさんと新人俳優B君を使って説明します。
【シーン1】
名前も無い通行人の役をAさんに依頼したら、Aさんは「エキストラの役は私には役不足だ!」と言いました。
このシーンでは、B君に任せるような役はAさんの能力は発揮できません。
役不足は、振り当てられた役に対して不満がある時に使う言葉ですので、この場合は正しい意味で使っています。
通行人役 < ベテラン俳優Aさん = 役不足
【シーン2】
大物女優Cさんとの夫婦役を新人俳優B君に依頼したら、B君は「Cさんの夫役は私には役不足です」と言いました。
このシーンでは、Aさんに任せるような主役はエキストラの役しかやったことのないB君にとっては役が重いはずです。
B君は、自分の力では役目が重たくて出来ないと感じ「役不足」と言いましたが、この場合は「力不足」が正しい使い方となります。
大物女優Cさんの夫役 > 新人俳優B君 = 力不足
本来「役不足」は、芝居で振り当てられた役が、俳優の力量に対して軽すぎる為力が発揮できないと役者が不満を抱く言葉でした。
一般的には、与えられた仕事や役目がその人の能力に対して軽すぎる場合に使います。
役不足と力不足では逆の意味になりますので、気を付けましょう。
【シーン3】
株式会社〇〇商事で働くDさんは、勤続20年のベテラン社員です。
団塊世代の上司がいっぱいいる為、Dさんは役職につけない平社員です。
Dさんは「〇〇商事で全然昇進できないのは役不足のせいだ!」と言いました。
この場合「役職のポストが不足している」という意味でDさんは使いましたが、これは勘違いや思い込みです。
役不足と力不足の両方とも当てはまりません。
このように『役不足』は、間違った意味でよく使われます。
こちらの動画をみて、もう一回復習をしましょう。
役不足を正しい意味で使っている人はどの位?
今でも間違った意味で「役不足」を使っている人はたくさんいます。
平成24年度に文化庁の「国語に関する世論調査」で「役不足」の意味を調査した結果は以下の通りです。
「本人の力量に対して役目が軽すぎること」と答えた人・・・41.6% 「本人の力量に対して役目が重すぎること」と答えた人・・・51.0%
このように間違った使い方をしている人の方が多い結果となりました。
古いデータですがNHKが平成5年に行った「ことわざ・成句の意味のゆれ」について調査した結果、正しい意味を理解している人は30%でした。
残りの70%が間違った意味で使っていました。
昔と比べると正しい意味を理解している人は増えましたが、約半数の人は間違っています。
データが古い為、現在はわかりませんが今でも間違った使い方をしている人が多いと思います。
あとがき
しつこいようですが大切な事ですので、最後にもう一回意味と違いを説明します。
役不足とは、役目が軽すぎて物足りない事です。
反対に役目が重くて力が不足している場合には、力不足を使います。
間違って「役不足」を使うと相手に対して失礼になりますので気を付けましょう!