しゃくにさわる・カンにさわる・虫唾(虫酸)が走るの意味と違い!

AさんとBさんが言い争いをしている、そのような場面を想像してみてください。

Aさん「君のその言い方がしゃくにさわるんだよ」
Bさん「それはこっちのセリフだよ。本当にカンにさわるな」
Aさん「これ以上、話をしても無駄だよな」
Bさん「そうだな。君の顔を見ているだけでも虫唾が走るよ」

二人の会話からは、互いの怒りの様子が伝わってきますよね。ここで怒りを表すポイントとなっている言葉があります。それは「しゃくにさわる」「カンにさわる」「虫唾が走る」です。

この三つの言葉には、どのような意味があり、またどのような違いがあるのでしょうか。この記事ではこれらのことについて、詳しく解説していきたいと思います。

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「しゃくにさわる」の意味

「しゃくにさわる」とは「腹が立つ・物事が気にいらなくて不快に思う」という意味です。気持ちがイライラしているときに使われる言葉です。

そのような際に、「自分が何でも正しいのだという、親の偉そうな態度がしゃくにさわる。」このように使います。

いかにも上から目線で押し付けてくるような言動には、誰しも腹が立ちますよね。

「しゃくにさわる」の成り立ち

「しゃくにさわる」を漢字で表すと「癪に障る」と書きます。

「癪」とは「胸や腹のあたりに起こる激痛のこと」を指します。医学が発達する以前の時代に、まだ病名のつけられない胸部・腹部に起こる激痛を総じて「癪」と呼んでいました。

また、この胸部・腹部の激痛を今では「さしこみ」といい、「癪」はその「さしこみ」のことを表しています。

さらに「癪」には「物事が気に入らなくて、気持ちがむしゃくしゃすること」という意味があり、これは、腹が立つと胸や腹がキリキリと痛むことが「さしこみ」と似ていることから転じたとされています。

「障る」には「さしつかえる」「支障をきたす」「ある感覚器官にふれて、嫌なものとして受け取られる」という意味があります。

「癪に障る」は胸部・腹部の痛みである「癪」に「障る」ことで「腹が立つ・物事が気にいらなくて不快に思う」という意味となるわけです。

「カンにさわる」の意味

続いて「カンにさわる」についてみていきましょう。

「カンにさわる」とは「気に入らないで腹立たしく思う」という意味です。こちらもまた「癪に障る」と同じように、いら立ちを表現する言葉です。

例えば、勉強しているときに、外で騒ぐ人たちの声が気になって集中できないという状況があったとします。とてもイライラしますよね。

そのような際に、「勉強に集中したいのに、外の声がうるさくて、カンにさわる。」このように使います

「カンにさわる」の成り立ち

「カンにさわる」を漢字にすると「癇に障る」となります。

「癇」とは「ひきつけや失神を伴う病気」のことです。突然に気を失って痙攣(けいれん)を起こす発作で、小児に多いといわれています。こちらもまた、病気から転じて「神経過敏で、激怒しやすい性質」を意味するようになりました。

「障る」は「癪に障る」で説明した通りで、「癇に障る」はひきつけなどの「癇」により心身に支障をきたす、つまり「気に入らないで腹立たしく思う」という意味に結びついていきます。

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しゃくにさわるの「癪」とカンにさわるの「癇」を使うと「癇癪(かんしゃく)」という言葉が成り立ちます。

癇癪とは、感情を抑えきれないで激しく怒る場合に使います。

このように「癇」と「癪」には同じような意味があるとわかりますよね。

「虫唾(虫酸)が走る」とは?

「虫唾(虫酸)が走る」と聞いて、どのような意味を想像しますか?そもそも虫唾(虫唾)とは何のことなのでしょうか。

「虫唾(虫酸)が走る」の意味

まず、「虫唾(虫酸)が走る」は「むしずがはしる」と読みます。

「虫唾(虫酸)が走る」は、「胸がむかむかするほど不快である」「ひどく忌み嫌う」という意味を持っています。

冒頭の会話文にもあるように、「顔を見るだけで虫唾(虫酸)が走る」などというように使うのですが、相当に嫌悪感のある言葉のように感じますね。

「虫唾(虫酸)」とは?

「虫唾(虫酸)」とは、胸がむかむかしたときに、口に逆流する酸っぱい胃液のことです。

「むしず」には、胃の中の寄生虫が出す「虫の唾」とする説と、寄生虫の出す酸っぱい液「虫の酸」とする説とがあり、そのために「虫唾」と「虫酸」の二つの表記があります。仮名遣いにも、「むしず」と「むしづ」の両方があります。

「走る」は「ある感覚や感情などが瞬間的に現れて消える」様子を表しています。

「虫唾(虫酸)が走る」は、もともとは、口内に虫唾(虫酸)が出て吐き気をもよおすことでしたが、転じて「吐き気がするほど不快である」「ひどく忌み嫌う」ことをたとえる言葉となっていったようです。

「虫唾(虫酸)が走る」とは「虫唾(虫酸)」が込み上げ、吐き気をもよおすほどの不快感が全身を襲う、そのような感覚を表現しているといえるでしょう。

「癪に障る」「癇に障る」「虫唾(虫酸)が走る」の違い

「癪に障る」も「癇に障る」も、病気からくる不快感が、いら立ちを表す言葉になっていったことからも、どちらもほぼ同じ意味だと考えてよいでしょう。

物事に対して何かしら不快に思い、腹が立ってイライラする、この感覚を言葉にすると「癪に障る」「癇に障る」となります。

「虫唾(虫酸)が走る」については、「癪に障る」「癇に障る」と少し異なり、不快に感じることは同じなのですが、それによってイライラするというよりは、気持ち悪い、嫌悪感を抱くという、嫌だと感じる気持ちを強く表しています。

物事に対する何らかの不快な思いから、その物事を気分が悪い、嫌いだと感じる、これが「虫唾(虫酸)が走る」です。

「癪に障る」「癇に障る」「虫唾(虫酸)が走る」の例文

最後に「癪に障る」「癇に障る」「虫唾(虫酸)が走る」を使った例文をあげてみましょう。

・彼の物を渡す時の乱暴な態度が、馬鹿にされているようで癪に障る
・何でも知っている素振りをする友人の話し方が癪に障る
・自転車のキーキーとなる音が癇に障る
・子供達の笑い声さえも癇に障るような、今日は何もかもがうまくいかない一日だった
・子供の頃に意地悪をされた友達の名前を聞くだけで虫唾(虫酸)が走る
・蜘蛛の巣が顔に引っかかってしまい、虫唾(虫酸)が走り、思わず悲鳴をあげてしまった

まとめ

「癪に障る」「癇に障る」「虫唾(虫酸)が走る」について説明してきましたが、いかかでしたでしょうか。

「癪に障る」「癇に障る」のような、いら立ちを感じるくらいであれば、自体はまだ修復できそうですが、「虫唾(虫酸)が走る」までに至ってしまうと、その気持ちを元に戻すのは難しいでしょう。

人間関係で、「虫唾(虫酸)が走る」と感じる、または思われてしまうような状況には陥りたくないですね。

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