謝罪の気持ちを伝えたいとき、みなさんはどのような言葉を口にしますか?「申し訳ありません」や「申し訳ございません」という言い方をすることが多いのではないでしょうか。
ごく当たり前のように使用しているこの「申し訳ありません」「申し訳ございません」という言葉、その使い方について疑問を持ったことはありませんか?
「申し訳ありません」「申し訳ございません」という言い方、実は間違いであるとの指摘もある言葉なのです。
そこで、この記事では「申し訳」とはどういう意味なのか、またその使い方について解説し、「申し訳ありません」「申し訳ございません」という言い方について考えてみたいと思います。
「申し訳ありません」「申し訳ございません」の意味とは?
人に謝るときに「ごめんなさい」や「すみません」という言葉が真っ先に思い浮かぶことでしょう。では「申し訳ありません」や「申し訳ございません」はどのような場合に使われるのでしょうか。
「申し訳ありません」の意味とは?
「申し訳ありません」は「申し訳ない」を丁寧に言い表した敬語です。
「申し訳ない」とは「相手にすまない気持ちで、弁解のしようがない」という意味です。そして相手にわびるときに用います。
同等の立場や目下の相手に対して、何かを詫びたいときには「君の大切な服を汚してしまって申し訳ない」このように、「申し訳ない」と使っても問題はないでしょう。
しかし目上の相手や失礼があってはならない相手に使うとしたらどうでしょうか。「申し訳ない」では失礼な感じがしますよね。このように敬意を表したい相手に対しては「申し訳ない」を丁寧に言い換えた「申し訳ありません」を用います。
「先輩からお借りしていた本の返却が遅くなり申し訳ありません」
このように、目上の人には「申し訳ありません」を使うと良いでしょう。
「申し訳ございません」の意味とは?
「申し訳ありません」をさらに丁寧に表現すると「申し訳ございません」という言葉になります。
例えば飲食店などで、店員が接客時に何かミスをしたとします。そのような際には店側は客に対して、最も丁寧な「申し訳ございません」という謝罪の言葉を使うのではないでしょうか。
仕事の取引先など、相手が絶対的に上の立場であるという場合には「申し訳ございません」を使うのが好ましいでしょう。
「申し訳ありません」「申し訳ございません」は正しい?間違い?
「申し訳ありません」は「申し訳ない」を丁寧に、「申し訳ございません」は「申し訳ありません」をより丁寧にした敬語であると説明しました。
しかし、「申し訳ありません」「申し訳ございません」という言い方は誤用であるとする意見と、誤用ではないとする意見があります。ここではそれらのことについて解説していきます。
「申し訳」の意味とは?
まずは「申し訳ない」の「申し訳」についてみてみましょう。「申し訳」のみではどのような意味があるのでしょうか。
「申し訳」には「自分のとった行動について、相手にその理由を説明すること」「言い訳」「弁解」という意味があります。
使い方は、
彼には、昨日の会議での失態を申し訳する機会が与えられた
(彼には、昨日の会議での失態を弁解する機会が与えられた)
このように用います。
「申し訳ありません」「申し訳ございません」は誤用?
「申し訳ありません」「申し訳ございません」を誤用とする場合、その理由としてあげられているのが、「申し訳ない」という言葉はそれ自体が一語の形容詞であるため、「ない」の部分を他の言葉に置き換えることはできないというものです。
例えば「危ない」という形容詞を「危ありません」「危ございません」とはいわないのと同じであるとの解釈です。
確かに「申し訳ない」は辞書にも形容詞として載っているので、その考えは正しいでしょう。形容詞の「申し訳ない」を丁寧に言い換えるとするならば、「申し訳ない」の部分を変化させることはできないので「申し訳ないことでございます」と表現するのが適切です。
「申し訳ありません」「申し訳ございません」は誤用ではない?
一方、「申し訳ありません」「申し訳ございません」は誤用ではないとする見解があります。こちらの場合、「申し訳ない」を一単語の形容詞としてみるのではなく、「申し訳」+「ない」という組み合わせで考えています。「申し訳」とは「言い訳」「弁解」という意味であると前述しました。
この「申し訳」という単語は名詞であり、こちらもまた辞書にそのように記載されています。
「申し訳ない」は、名詞の「申し訳」+否定の「ない」でできており、「申し訳ありません」「申し訳ございません」は「申し訳」に「ない」の丁寧語「ありません」「ございません」の組み合わせで成り立っているため、間違いであるとはいえない、これが「申し訳ありません」「申し訳ございません」が誤用ではないとする方の意見です。
まとめ
「申し訳ありません」「申し訳ございません」という表現は、「申し訳ない」を形容詞と解釈すれば間違いであり、「申し訳」という名詞と解釈すれば間違いではないと考えることもできます。
いずれにしても「申し訳ありません」「申し訳ございません」という使い方が、日常的に定着しているのが実際のところです。
仮に間違いである言葉だとしても、それが当然のように使用されていると、その言葉として認められていくことがあります。
「申し訳ありません」「申し訳ございません」も、一般にすでに受け入れられていると思うので、そのまま使用しても問題はないといえる言葉なのかもしれません。