「あなたは奇特な人ですね。」と人から言われた時、喜ぶ人とイラっとする人がいます。
この「奇特な人」や「奇特な方」の「奇特(きとく・きどく)」とはどのような意味があるのでしょうか?
「奇特な人」を「クレイジーな奴」だと思っていませんか?
この記事を読めば「奇特」の正しい意味がわかります。
類義語も紹介しますのでしっかり覚えましょう!
「奇特な人」の奇特の意味とは?
奇特な人は「言動や性格に普通の人とは変わったところのある人(変人・変わり者)」ではありません。
よく「クレイジーな奴」や「キチガイ(基地外)」といった「気が狂っている人」と同じ意味で使っている人が多いようです。
奇特とは「すぐれている様子。行い、心がけが感心するさま。」という意味があります。
つまり奇特な人は、「感心な行いをする(心がけがある)優れた人」という意味です。
「彼は奇特な人だ」という言葉は、その男を変人扱いしている訳ではなく、褒めていることになります。
最近ではテレビ番組「クレイジージャーニー」のおかげで「クレイジー」も褒め言葉で使われることもありますが...
「奇」と「特」の意味
奇特の『奇』には「珍しい、不思議な、あやしい、思いがけない」という意味の他に「普通の程度をはるかに超えてすぐれている」という意味があります。
さらに『特』には「飛びぬけてすぐれたもの」という意味があります。
似たような意味が重なって「奇特」という字が成り立っていることがわかります。
奇特の類義語
奇特の類義語には『神妙(しんみょう)』や『殊勝(しゅしょう)』などがあります。
神妙には「心がけや行いが立派ですぐれていること。けなげで感心なこと。」という意味があります。
そして殊勝には「心がけや行動などが感心なさま。けなげであるさま。」という意味があります。
どちらも奇特と同じような意味ですが少し使いにくいです。
そんな時は「立派」を使えば良いと思います。
奇を使った褒め言葉
奇を使った褒め言葉はいっぱいあります。
例えば「奇抜なアイデア」は「斬新(ざんしん)なアイデア」と似たような意味があります。
また珍しい風景を褒める時には「奇観」や「奇勝」を使います。
その他にもすぐれた才能を褒める時の「奇才」は、「天才、異才、鬼才」と似たような意味で使われます。
この様に「奇」は決して「変」という意味ではないことがわかります。
奇特の意味を間違えている
「奇」にはマイナスイメージの「猟奇的、怪奇現象、奇妙」などがあります。
その影響があり、「奇特」の意味も同じようマイナスイメージで捉えている人が多いことがわかりました。
文化庁が発表した平成14年(2002年)度「国語に関する世論調査」の結果は以下の通りです。
A.優れて他と違って感心なこと→49.9% B.奇妙で珍しいこと→25.2%
結果、半数近くの人は本来の意味で使っていますが、若い世代は本来の意味ではない「B」を選んでいることがわかりました。
昔の調査ですので、今後は誤用する人が増えると予想されます。
こうなると自分は類義語を使って誤解のないように気を付けることができますが、人から言われた時に困ってしまいますね。
奇特を間違える原因は「週間少年ジャンプ」?
先ほど若い世代は誤用している人が多いことがわかりました。この原因は「週間少年ジャンプ」が影響しているという説があります。
この時代のジャンプには「ジャンプ放送局」という読者投稿コーナーがあり、人気ナンバーワンのコーナーが「奇特人間大賞」でした。
このコーナーのコンセプトが「身近にいる変なやつ大集合」というもので、ジャンプ読者の間で「奇特=変なやつ」が共通認識になったと思われます。
あとがき
この記事を読むまでは「奇特=変わり者」と思っていた人も多いのではないでしょうか?
最近は「クレイジー」や「傾奇者(かぶきもの)」など本来の意味とは異なり褒め言葉になっている言葉もあります。
しかし、相手に誤解を与える言葉は使わない方が良さそうですね。