本来の意味とは違う使い方が多い言葉で「煮詰まる」という言葉があります。
料理でこの言葉を使う場合は、間違った意味で使うことはないと思いますが、会議や議論をしている時に使う場合は注意が必要です。
それは年代によって「煮詰まる」の受け止め方に違いがあるからです。
それでは詳しく見ていきましょう。
「煮詰まる」の意味とは?
「煮詰まる」の意味は、「行き詰まる」とは違います。
行き詰まるとは、進む道や方法がなくなる事です。
例えば、「経営に行き詰まり、もう倒産するしかない」という使い方をします。
つまりどうにもならない状態になる事ですね。
これを踏まえてあなたは「議論が煮詰まってきた」状態は、どちらが正しいと思いますか?
A:結論を出す段階になる状態 B:結論が出せない状態
もちろんAの「結論を出す段階」が正解です。
しかし、先に「行き詰まる」の説明があったから答えがわかったという人も多いのではないでしょうか。
実際にBの「結論が出せない状態」つまり行き詰まった意味で使う人はたくさんいます。
例えば、「煮詰まってしまって、これ以上良いアイデアが浮かばない」という言葉を聞いた事があるかもしれません。
「煮詰まる」の本来の意味は、「十分に議論や検討などをして結論が出る状態になる」という意味になります。
もうひとつの意味は、料理で使う場合です。
煮えて水分がなくなる事を意味しています。
料理をする時は、火加減に気を付けて時々かき混ぜたり鍋をゆすったりして、焦げないよう注意が必要です。
「料理がもうすぐ出来上がる」と「結論を出す段階になる状態」は、似ているような感じがしますよね。
このような覚え方をするとわかりやすいと思います。
「煮詰まる」を誤用しやすい理由
文化庁が平成19年度に行った「国語に関する世論調査」では、「煮詰まる」の意味を「結論が出せない状態になること」と答えた人が若い世代に多いことがわかりました。
結論が出せない状態になること→37.3% 結論の出る状態になること→56.7%
「煮詰まる」を誤用する原因は、意味をマイナスイメージで捉えていることが挙げられます。
物事がうまく運ばない状態の「行き詰まる」と「煮詰まる」の「詰まる」が共通している為、同じ意味で捉えてしまったのかもしれません。
また若い世代ほど煮物料理が苦手で、「鍋を焦がした経験」や「煮詰めるのに時間がかかるから嫌い」というようなマイナスイメージがあるのかもしれません。
10年以上も前に行った調査の為、現在はもっと多くの人が、マイナスイメージの「行き詰まる」の意味で使っていることでしょう。
「煮詰まる」の言葉の変化
今までは「煮詰まる」を「十分に議論や検討などをして結論が出る状態になる」の意味で使ってきました。
しかし間違った意味で使う人が増えたことにより、一部の辞典では、「結論の出る状態」と「結論が出せない状態=行き詰まる」の両方が記載されています。
まったく正反対の意味があるので、「煮詰まる」を使う場合には、相手の受け取り方に違いがあることを考える必要があります。
例えば、本来の意味で使う場合には、
「みんなの意見が煮詰まってきたから、そろそろ結論を出します」
行き詰まった意味で使う場合には、
「特に良いアイデア思い浮かばずに煮詰まってきたので気分転換して考えてきます」
間違った意味で受け取られない為には、前後に相手が理解できるような言葉を付け足すことが大切です。
あとがき
時代と共に言葉の意味が変化した「煮詰まる」はいかがでしたか?
「煮詰まる」の意味が、世代によって受け取り方に違いがあることがわかりました。
若い世代は「煮詰まる」と「行き詰まる」を同じ意味で使用している。
年配の世代は元々の意味「結論を出す段階になる状態」で捉えている。
相手に通じる言葉を選ぶ必要がありますね。