間違った意味で使っている人が多い言葉に「敷居が高い(しきいがたかい)」という「諺(ことわざ)」があります。
老舗の高級料亭を見て「あの料亭は敷居が高いから私には無理だよ」と使うのは間違いです。
この場合は、「敷居が高い」=「格式がある」または「高級なお店」、「手が届かない」という意味で使っていると思います。
この意味では「レベルが高い」、「分不相応(ぶんふそうおう)」、「高嶺(たかね)の花」ですね。
「敷居が高い」と「ハードルが高い」もこの場合は使いません。
では、このふたつの言葉の意味と違いについて見ていきましょう。
「敷居が高い」の意味とは?
そもそもこの「敷居」とは何かわかりますか?
敷居とは、家の玄関や障子やふすまを開け閉めする際に敷かれたレールや溝がついた木の事です。
説明するより写真を見た方が一発でわかります。
戸を動かす為の溝がある事がわかりますよね。
つまり敷居は、この溝がある木の事です。
ことわざで使う場合は、障子やふすまではありません。
外の門や玄関にある敷居が高い為、その家には行きにくいという意味で使います。
でも実際に敷居が高い家は見たことがありませんよね。では、なぜ敷居が高く感じるのでしょうか?
足を怪我したから?それとも車いすに乗っているから?
どちらも間違いです。
正解はその家に行く人の気持ちの問題です。
「敷居が高い」の意味は、不義理をした場合や相手に迷惑を掛けているからその人の家に行きにくい時に使う言葉です。
例えば、ずっとご無沙汰している人やお世話になっている人から借りた物を失くしてしまった場合は、その相手に会いにくいですよね。
つまり訪ねづらくなって相手の家の敷居が高く感じてしまったという事です。
「敷居が高い」を誤用しやすい理由
本来は「不義理をしたから行きにくい」という意味で使いますが、この「不義理」が抜けてしまい「行きにくい」という部分だけが残ってしまったからです。
行きにくい=高級で手が届かない、格式が高い、自分のレベルに合わない
では、どのくらいの人が間違った意味で使っていると思いますか?
文化庁が発表した平成20年度「国語に関する世論調査」の結果は以下の通りです。
A:相手に不義理などをしてしまい行きにくい→42.1% B:高級過ぎたり、上品過ぎたりして入りにくい→45.6% AとB両方の意味でOK→10.1%
10年前の調査結果ですので、現在は40代以下の人が誤用していると思われます。
またVTRでは「ハードルが高い」と混ざった事が原因のひとつと言っていました。
「ハードルが高い」は、障害が高すぎて困難という意味です。
例えば、「東京大学に合格するのはハードルが高いからあきらめよう」という使い方になります。
この場合は「レベルが高い」と同じ意味です。
しかし、高級そうなお店を見て「レベルが高いレストラン」と使えるのに対して、「ハードルが高いレストラン」と使うのには、少し違和感があります。
「レベルが高い」=「ハードルが高い」は、状況に応じて正解・不正解になるような気がします。
この違いについては人によりそれぞれ感じる事だと思います。
時代と共に言葉の意味は変化する
本来の意味と間違った意味が逆転してしまった「敷居が高い」は、『広辞苑』第七版で両方の意味で掲載されています。
広辞苑は愛用者が多い人気のある国語辞典ですが、他の辞典では本来の意味を掲載していますので注意が必要です。
そして指先ひとつで調べる時代になっていますので、辞典で言葉を調べる人は減っていると思います。
ですので、元々の意味を把握した上で相手によって言葉を選ぶ必要があります。
あとがき
「敷居が高い」の意味は、時代と共に変化しているようですが、元々の意味である「不義理などをしてしまい行きにくい」を覚えておく必要があります。
どの言葉を使えば良いか迷った時には、「レベルが高い」を使うと便利ですよ!