「本日の試合で、彼らは前回の雪辱(せつじょく)を果たすことができるでしょうか」
スポーツの試合などにおいて、このようなコメントを耳にすることがありますね。この文章の中で使われている「雪辱」という言葉の意味をご存知でしょうか。
「雪辱」は普段からよく使用する言葉だと思いますが、「雪辱」について正しく説明できますか?
また、冒頭の一文を読んで「雪辱を果たす」ではなく「雪辱を晴らす」ではないの?と思った人もいるでしょう。
「雪辱」の後に続く言葉は「果たす」と「晴らす」どちらなのでしょうか。あるいはどちらも正しいのでしょうか。
この記事では「雪辱を果たす」「雪辱を晴らす」について、その意味と正しい使い方を説明していきます。加えて同じような意味と思われる「リベンジする」という言葉についても解説していきます。
「雪辱を果たす」「雪辱を晴らす」の「雪辱」の意味とは?
「雪辱を果たす」「雪辱を晴らす」、この二つの使い方が正しいのかどうかを知るために、まずは「雪辱」の意味についてみていきましょう。
「雪辱」の意味は、「恥をすすぐこと」「勝負などに負けて受けた恥を、次に勝つことで取り除くこと」です。
「雪」という漢字は「雪ぐ(すすぐ・そそぐ)」と読み、「洗い清める」「すすぐ」という意味があります。洗濯物などの物に付いた汚れではなく、受けた恥や、汚名を取り除くという場合に用います。
「辱」には「はずかしめ」「はじ」という意味があります。恥をかかされることを「辱めを受ける」というように使います。
「雪辱」という言葉は、「すすぐ」の意である「雪」と「はじ」の意である「辱」、この二文字から成り立っており「はじをすすぐ」という意味となります。「雪辱戦」「雪辱を遂げる」のように使います。
「雪辱を果たす」「雪辱を晴らす」正しいのはどっち?
「果たす」には「物事を成し遂げる」、「晴らす」には「心の中の不快な感情を取り除いて気持ちをすっきりさせる」という意味があります。
「雪辱を果たす」の意味を考えると「恥を取り除くことを成し遂げた」となり、文章として成立します。
では「雪辱を晴らす」、こちらはどうでしょう。「恥を取り除くことを取り除く…」と、取り除くという意味が被ってしまいます。
「雪辱」はそれだけで、すでに恥を取り除く行為を表しているため、「晴らす」を続けるのは間違いなのです。
しかしながら、「雪辱を晴らす」という間違った使われ方がされていることが多いのも事実です。その原因としては「雪辱」と「屈辱」の混同があげられます。
「屈辱」とは「はずかしめられて面目を失うこと」であり、「屈辱」の場合には「失った面目を取り除く」という意味として「屈辱を晴らす」のように「晴らす」を使うので、「雪辱を果たす」と混同し誤用が生まれてしまったと考えることができます。
「雪辱を果たす」こちらが正しい表現なので、間違えないように気をつけましょう。
「リベンジする」の意味とは?
ここでは普段からよく耳にするようになった「リベンジする」という言葉について触れてみたいと思います。
「リベンジ」は英語で「revenge」と書き、意味は「仕返し」「復讐」です。例えば「次は必ずリベンジする」と言ったとすると、「次は必ず仕返しする」のように復讐の意味として使われます。
ところが日本で使われる「リベンジする」は英語とは違い、「負けた相手に勝つこと」「借りを返すこと」という意味で用いられることが多く、「雪辱」と類似した意味を持ちます。
「リベンジする」は「雪辱を果たす」と同じ!?
日本における「リベンジ」は本来の英語の持つ意味とは違い、「失敗を取り返すこと」として使用するので「リベンジする」は「雪辱を果たす」と同じ意味として理解してもよいと思われます。
但し、英語として解釈する場合には「復讐する」と受け取られてしまうので、その辺りは注意しましょう。
「雪辱を果たす」の正しい使い方
「雪辱を果たす」の使い方を例文でみてみましょう。
・先日の雪辱を果たすために、気合いを入れて今日の試合にのぞむ
・私は悔しさをバネにすることで、雪辱を果たすことができた
・努力を怠らなければ、いずれ雪辱を果たす時が訪れる
・彼らは雪辱を果たすために必死に練習した
これらの文章は「雪辱を果たす」を「リベンジする」と置き換えることもできます。
まとめ
「雪辱」はそれ自体に「はじを取り除く」という意味があるので、「晴らす」ではなく、「成し遂げる」の意味を持つ「果たす」を使うのが正解で「雪辱を果たす」と表現することがわかりました。
単語ごとの意味を理解すると、その単語に続くにふさわしい言葉が意外と簡単にみえてくるかもしれません。