「その話のさわりだけでも教えてよ!」と友達に聞かれたらあなたはどこの部分を説明しますか?
この「話のさわり」という言葉、実は意味を間違えて捉えていることが多いのです。果たして「さわり」とはどの部分を指すのでしょうか。この記事では「さわり」の正しい意味について解説していきたいと思います。
「話のさわり」の意味とは?
「話のさわり」の指し示す部分が、よく勘違いされているのですが、話のさわりとは「話の最初の部分」のことでしょうか。それとも「話の聞かせどころ(山場)」のことでしょうか。さっそく意味をみていきましょう。
話のさわりとは、話の最初の部分ではなく、話の聞かせどころの部分をいいます。「最も盛り上がる部分」や「一番興味を引くところ」または「話の要点」を意味します。
つまり見せ場ですね。
「話のさわり」の語源
話のさわりの「さわり」は「触り」と書き、さわること、ふれることです。
そして「話のさわり」に使われる「さわり」とは、もともとは他の節にさわっているとの意味で、※義太夫節の中に義太夫節以外の他流の曲調を取り入れた部分のことを指していました。
※義太夫節:三味線を使った劇場音楽、浄瑠璃の一種
そしてその「さわり」部分は目立たせるためのものであったため、そこから転じて、邦楽の曲中の聞かせどころを指すようになり、さらに転じて、話や物語などの要点、または最も興味を引く部分という意味となっていったようです。
「さわり」の意味の誤解について
「話のさわり」が「話の最初の部分」ではなく、「話の聞かせどころ、または要点」を指すことはわかりましたね。
しかし「さわり」を本来の意味ではない「最初の部分」として使っている人が多いとのデータがあります。
文化庁による「国語に関する世論調査」の結果
平成28年度に実施された文化庁の「国語に関する世論調査」によると、「話のさわりだけ聞かせる」とは「話などの要点のこと」と「話などの最初の部分のこと」のどちらの意味だと思うかを尋ねたところ、本来の意味とされる「話などの要点のこと」と答えた人が36.1%、本来の意味ではない「話などの最初の部分のこと」と答えた人が53.3%という結果が出ており、「さわり」の意味を間違えて解釈している人の割合の方が多くなっています。
話のさわりの「さわり」は「触り」と書き、さわること、ふれることです。
このような間違いを招いた原因としては、「さわり(触り)」という言葉を、軽くさわる、ふれるといった感覚で捉えたことで、「さらりと最初の部分だけに軽くふれる」と解釈したからかもしれません。
「話のさわり」を使う際の注意点
例えば「物語のさわり」といえば「物語の聞かせどころ」を、「映画のさわり」といえば「映画の最も盛り上がる場面」を「曲のさわり」といえば「曲のサビの部分」を指します。
ですから、「あの物語のさわりだけでも教えて」と尋ねられたら、物語の最初の部分ではなく、「一番の聞かせどころ」を教えるのが答えです。
「今、流行っている映画のさわりを聞かせて」と求められたら、映画の冒頭部分ではなく、「最も盛り上がる場面」または「映画の要点」を語るのが正しいです。
歌謡曲の場合、「◯◯の曲のさわりだけでいいから歌ってみて」と言われたら、その曲の出だしの部分ではなく、「サビの部分」を歌って聞かせるのが正解です。
しかしながら、「さわり」という言葉を、本来の意味ではない「話などの最初の部分のこと」と捉えている人が半数以上の割合で存在するという現状においては、「さわり」の使い方に注意しなければならないことがあります。
仮に「あの映画のさわりを教えて」と言われた場合、本来の「さわり」の意味である「話の盛り上がり部分、または要点」として聞かれているのであれば、その意味合い通りに「一番の要となる場面」を教えてあげればよいでしょう。
ところが、これが間違えた意味での「さわり」つまり「最初の部分」として聞かれていた場合には、その映画の一番盛り上がる場面について語り出したら、話の始まりだけを聞こうと思っていた相手は、なぜ重要な部分を話してしまうのかと憤慨することでしょう。
ですから、たとえ自分が正しいとしても、誤解を招かぬように気をつけなければなりません。
まとめ
「話のさわり」とは「話の聞かせどころ・一番の盛り上がる箇所、または(話の)要点」のことですが、間違えた解釈をされていることが多いのも事実です。
言葉の意味は、たとえそれが間違った意味であったとしても、その間違いの方を使う人の割合が多ければ多いほど、勘違いして使用している可能性があることを踏まえて、話の行き違いがないように注意する必要があるのではないかと思います。