「このテストは80点取ることができれば御の字だね。」や「あの学校(会社)の試験に受かれば御の字だよ。」などの使い方をする「御の字(おんのじ)」という言葉。
たまに聞きますよね。中には「恩の字」と誤解している人もいます。
しかし、この「御の字」の本来の意味や由来をご存知でしょうか?
正しい意味や使い方を知るためには、文字通り「御」の字の意味から見ていきましょう!
「御の字」の意味
「御の字」は、「御」の字の意味がわかれば正しい意味がわかります。
「御」は「御中(おんちゅう)」、「御歳暮(おせいぼ)」、「御出席(ごしゅっせき)」、「御意(ぎょい)」という言葉に使われ「おん、お、ご、ぎょ」と読みます。
また、一般的にはひらがなを使いますが「お客様」や「お茶」、「お勘定」などは、本来は「御客様」、「御茶」、「御勘定」と書きます。
このように私たちが日常「御」の字を使う場合、尊敬の意味合いや丁寧な表現に使われていることがわかります。
つまり「御の字」は、「『御』の字を付けて呼ぶべきもの」という意味があり、
・非常に結構なこと ・望んだことがかなって十分満足できること ・最上のもの
といった意味になります。
このことから「満足はしていないが、まあまあ納得できる合格点(妥協点)」といった意味で使うのは間違いです。
「御の字」の由来
「御の字」の語源由来は、江戸時代初期の遊廓・遊郭(ゆうかく)で使われていた遊里語(ゆうりご)です。
遊里語は遊女たちが使う言葉「ありんす」や「ざんす」が有名ですが、実は「御の字」も遊里語が由来です。
遊女の中でも歌や舞の芸に優れ、教養もある上級な遊女は「太夫(たゆう)」や「花魁(おいらん)」と呼ばれていましたが、彼女たちを指す隠語で「最上のもの」や「十分に満足できる」といった意味で「御の字」が使われたと言われています。
「御の字」の使い方
先ほど説明した通り「御の字」の本来の意味は、「満足できること」に使われます。
例えば「70点取れば満足できる」と思っていたテストで78点取ることが出来れば十分満足できますよね。
この時に「78点取れて御の字だよ」と使う場合は、正しい使い方です。
しかし、よくある間違えた使い方は、80点を目標にしていたテストで78点を取った時に同じように「78点取れて御の字だよ」と使います。
この場合「結果は十分に満足できなかったが、まあ納得できる点は取れたよ」と意味で使っていますが、これは誤りです。
このように「ベストではないがベターな結果」や「ひとまず安心できる点を取った」といったように、「最低限の目標はクリアできた場合」や「妥協できる場合」に使う人が多いですが、本来の意味とは異なり間違った使い方です。
「御の字」世間では?
文化庁が平成20年度に行った「国語に関する世論調査」では、「70点取れれば御の字だ」という例文で、意味を尋ねた結果「一応、納得できる」と答えた人が、本来の意味である「大いにありがたい」と答えた人より多いことがわかりました。
一応、納得できる→51.4%(間違い) 大いに有り難い→38.5%(正解)
今回の世論調査では、「70点取れれば御の字だ」という例文だった為、この点数が「大いに有り難い点数」と捉える人が少なかったことも原因のひとつだと思われます。
例えば例文が「90点取れれば御の字だ」だった場合、「一応、納得できる点数」と捉えにくいのではないでしょうか。
「70点」という点数が、受け取る人にとって「満足まではいかないが、まあまあ納得できる点数」と捉えやすかった可能性があります。
いずれにしても本来の意味を正しく理解していれば、その点数に対して、「非常に満足できる点数」と解釈できます。
また、漢字の書き間違えで「恩の字」と間違う人もいますが、意味だけを考えてみると「恩を受けてありがたい」と捉えることもできますので、「御の字」=「ありがたい」と覚えて下さい。
あとがき
「御の字」の意味や由来、使い方についていかがでしたか?
自分では正しい意味で使っていたとしても、受け取る側がどのように「御の字」を捉えるか難しいですね。
第一志望の学校に受かった場合「〇〇学校に合格できて御の字だよ。」と言った場合、相手によっては「望みが叶ってよかったね。」と感じたり、「滑り止めの学校に受かった程度」と感じる人もいます。
もしも誰かが「御の字」と言った場合、どっちの意味で使っているのか判断する必要がありますね。