「辟易する」の「辟易」の意味とは?「辟易とする」はなぜ誤用なの?

「辟易する」という言葉をご存知ですか?「彼の話はいつも何が言いたいのか、よくわからないよね。」「そうそう。話が長すぎて辟易してしまうよ。」このような会話がされている場面を見聞きしたことはないでしょうか。

「辟易する」の「辟易」とはどのような意味なのでしょう。また、「辟易とする」という言い方がされることもありますが、それは間違った使用法です。

この記事では「辟易」の意味と「辟易とする」はなぜ誤用なのかについて、解説していきます。

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「辟易」の意味とその語源

「辟易(へきえき)」とは、
1.閉口すること・うんざりすること
2.相手の勢いに押されて、尻込みすること・たじろぐこと
という意味です。

「閉口(へいこう)」とは「どうしようもなくて困ること」「口を閉じて言葉を発しないこと」「言い負かされたり圧倒されたりして、言葉に詰まること」をいいますが、「辟易」の意味とされている「閉口」とは「どうしようもなくて困ること」です。

1の意味の例文としては
・ネットにあふれる誹謗中傷の言葉の多さには辟易する
(ネットにあふれる誹謗中傷の言葉の多さにはうんざりする)
・先生のホームルームでのお説教に辟易した
(先生のホームルームでのお説教にうんざりした)
・彼の身勝手さに辟易した私は、ついに怒鳴ってしまった
(彼の身勝手さに閉口した私は、ついに怒鳴ってしまった)
などがあげられます。

2の意味の例文としては
・敵の圧倒的な軍勢の多さに辟易した
(敵の圧倒的な軍勢の多さに尻込みした)
・会議での彼の押しの強さに辟易した
(会議での彼の押しの強さにたじろいだ)
などがあげられます。

実際の使われ方としては、2よりも1の意味「閉口すること・うんざりすること」としての使用が多いと思われます。

「辟易」の語源

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「辟易」は中国最初の歴史書『史記』に出てくる表現です。「辟」は「避ける」、「易」は「変える」という意を持つ漢字で、この二つが組み合わさり「辟易」の形で「道を避けて場所を変える」というのがもともとの意味でした。

そこから転じて、「相手を恐れて逃げる」という意味を表すようになったそうです。

さらに、「逃げる・たじろぐ」という意味が、相手を恐れて何もできない、どうしようもない状態を表すことから、「閉口する・うんざりする」という意味としても使われるようになったといわれています。

「辟易とする」はなぜ誤用?

「辟易」という言葉は前述の例文にもあるように「辟易」に「する」をつけて「辟易する」という形で使われるのが一般的です。

ところが「辟易とする」という形で使われることがあります。これは誤用なのですが、ではなぜ「辟易とする」は誤用なのでしょうか。

「辟易する」は、「動作性や状態を表す名詞」+「する」=動詞

「辟易」は名詞、「する」は動作を表す動詞です。名詞の中には、「動作性や状態を表す名詞」に「する」という「動詞」が付くことで、その名詞自体が「動詞」となるものがあります。

「辟易」もその一つで、「する」が付くことにより「うんざりする」の意味を持つ「辟易する」という一つの動詞となります。

ですから、「辟易とする」のように「辟易」の後に「とする」を付けることはしません。

「辟易」以外の「動作性や状態を表す名詞」+「する」=動詞となる言葉

「運動」は「運動する」、「操作」は「操作する」、「散歩」は「散歩する」、「失望」は「失望する」といいますね。

これらも「運動」「操作」「散歩」「失望」という動作性や状態を表す名詞に、するが付くことで動詞となる言葉です。

「辟易する」もこれらと同様で、動詞としての一つの単語となるので、「辟易とする」とは表現しないのです。

まとめ

言葉を正しく使用するのは難しいことのように思います。たくさんある言葉を全て正しく理解しようとすると辟易してしまいますよね。

しかし、思い立った時に、少しずつでも学ぶことができれば、知らぬ間に多くの言葉を吸収しているかもしれませんよ。

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