今の世の中、なかなか景気が良くならず、日々の生活も決して余裕があるとは言いがたいのが現状ですね。
2019年10月からは消費税が10%に増税されます。それに伴い家計が負担増になるのは明らかで、これからどのように生活をしていけばいいのかと、不安になってしまいます。
「まったく、このままでは貯金を取り崩さなくてはならないわ」
「本当よね。でも切り崩すだけの貯金があればまだいいわよ」
ある日のファミリーレストラン。隣の席にいらした年配のご婦人方から聞こえてきた会話に勝手に頷きつつ、ある疑問が浮かびました。
取り崩す?切り崩す?二通りの言葉がでてきたけれど、どちらが正解なのだろう…と、ふと気になり調べてみることにしました。
また、貯金のほかに預金という言い方もあります。この二つの言葉には何か違いがあるのでしょうか?こちらについても探っていきたいと思います。
貯金を「取り崩す」と「切り崩す」正しいのはどっち?
「切り崩す」私はこちらであると思っていましたので、「取り崩す」に違和感を覚えたのですが、皆さんはどうでしょう?
まずはそれぞれの意味を国語辞典で調べてみました。
「取り崩す」の意味
1.くずして取り去る。例文「廃屋を取り崩す」
2.まとまったものから少しずつ取る。例文「預金を取り崩す」
1.とりこわす。崩す。例文「古い蔵を取り崩す」
2.まとまっているものを少しずつ取り出してなくす。例文「貯金を取り崩す」
「切り崩す」の意味
1.ものを切ったり、けずり取ったりしてもとの形でなくする。例文「丘を切り崩して宅地にする」
2.相手側のまとまりを崩し、勢力を弱める。例文「敵の一角を切り崩す」「反対派を切り崩す」
1.削り取ってもとの形でなくする。例文「やまを切り崩す」
2.相手方の弱点などを突いて、全体のまとまりをこわす。例文「敵陣を切り崩す」「反対派を切り崩す」
貯金を「取り崩す」が正解!
どちらの国語辞典をみても「取り崩す」にはまとまったものから少しずつ取るという意味があり、例文としても「貯金を取り崩す」とあげられています。
従って貯金を「取り崩す」が正しい用法であり、「切り崩す」は間違った使い方であることがわかります。
貯金と預金の違いとは?
実は先ほどの国語辞典の「取り崩す」の例文に貯金も預金も使われていたことにお気づきですか?
この場合、まとまったものにあたるのが「貯金」や「預金」であり、それが貯まったお金を指すことはわかりますね。
では貯金と預金それぞれがどのような意味を持っているのかを具体的にみてみましょう。
貯金とは?
貯金とは「お金を貯めること」、また「貯めたお金のこと」です。
ゆうちょ銀行、農協、漁協では「貯金」と呼びます。
預金とは?
預金とは「お金を預けること」、また「預けたお金のこと」です。
銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫では「預金」と呼びます。
「貯金」と「預金」の違い
どちらもお金を貯めること、またその貯めたお金の意味なのですが、「貯金」と「預金」の違いとは、そのお金を貯めるために預ける先によって呼び方が変わるという点です。
確かに、ゆうちょ銀行では「通常貯金」「定期貯金」「貯金通帳」、銀行では「普通預金」「定期預金」「預金通帳」と呼んでいますね。
尚、自宅でお金を貯めることもあるとか思いますが、その保管場所として貯金箱を使用することも多いでしょう。
しかし預金箱とはいいませんよね。通常、個人的に手元に貯めるお金は「貯金」と呼び、「預金」とは言いません。
つまり、お金を貯めるという広い意味で「貯金」は使われ、「預金」は金融機関に限って用いられる表現になります。
まとめ
貯金もしくは預金は「取り崩す」が正しく、「切り崩す」は間違いでした。
私はずっと勘違いをしていました。私と同じように思い違いをしていた方も案外多いのではないでしょうか?
しかしなぜそのような間違いをしていたのでしょう。例えば「生活を切り詰める」「家計を切り盛りする」など、お金にまつわる大変な状況を表す言葉に「切り〜」と付いていることが、無意識のうちに関わっているのかもしれません。
正しい日本語を使いたいものですが、「貯金を取り崩す」というこの言葉を使う状況には、できるだけならずに過ごしたいものです。