日本語は難しい…そう感じたことはありませんか?その一因として、本来の正しい言い方ではなく、何かしらの誤解から生じた間違えた言い方で使われている言葉の存在というものがあげられます。
「すべからく」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?またその正しい意味はご存知ですか?実はこちらも間違えて使われやすい言葉の一つです。
この誤用されやすい「すべからく」の正しい意味と使い方を、例文を交えながら解説します。
例文から「すべからく」の意味を考えてみよう!
ここでひとつの例文をあげて、それをもとに「すべからく」の意味について考えていきます。
「学生はすべからく勉学に励むべきだ」
①学生は皆、勉学に励むべきだ ②学生は当然、勉学に励むべきだ
「すべからく」の意味として、①と②どちらか一方が正しく、もう一方は間違いです。みなさんは正しいのはどちらだと思いますか?
正解は②です。①の場合、「すべからく」は「すべて、皆」という意味で使われており、②の場合は「当然、ぜひとも」という意味で使われています。
さてここで、「すべからく」の意味を辞書で調べてみましょう。
辞書による「すべからく」の意味
すべからく【須く】 漢文訓読に由来する語。 「すべくあらく(すべきであることの意)」の約。 下に「べし」がくることが多い。 ぜひともしなければならないという意を表す。 当然。 古くは「すべからくは」の形でも用いられた。 近年「参加ランナーはすべからく完走した」などと、 「すべて」の意で用いる場合があるが、誤り。
辞書に示すように、「すべからく」は「ぜひともしなければならない」「当然」という意味であり、先ほどの例文の答え①のように「学生は皆、勉学に励むべきだ」というような「皆、すべて」の意味はありません。
また、この「学生はすべからく勉学に励むべきだ」という例文、実は文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」において使用されたもので、その調査によると本来の意味とされる「当然、ぜひとも」で使う人が41.2%、本来の意味ではない「すべて、皆」で使う人が38.5%という結果が出ています。
正しい意味で使っている人と、間違えた意味で使っている人がほぼ半数ずつということになり、「すべからく」はそれほど誤って使われやすい言葉なのです。
漢字から「すべからく」を正しく覚えよう!
ではなぜそうした誤用が生じてしまうのでしょうか。その理由として「すべからく」の「すべ」と「すべて」が響きとして似ていることから誤解がうまれたと考えられます。
また先に取り上げた例の「学生はすべからく勉学に励むべきだ」のように皆やすべてという誤った意味で捉えても、文章として成り立ってしまうため、間違いに気付きにくいという要因もあると思われます。
ではどのようにしたらこれらの間違いを防げるでしょうか?
そこで注目して欲しいのが「すべからく」の漢字表記「須く」です。この漢字を理解することで正しい使い方を覚えましょう。
辞書で解説されているように、「すべからく」は漢文から由来しています。漢文には再読文字という二度読む文字があります。「須」もその一つであり、「すべからく〜すべし」と読み、「ぜひ〜する必要がある」「当然〜すべきである」という意味です。
また、漢字の「須」自体にも必要とするという意味があります。必要なこと、なくてはならないことを「必須」といいますね。
「須く」の「須」は必須の「須」なので、このことから「必須であるから須く」と覚えてみてはいかがでしょうか。
「すべからく」の使い方(例文)
「すべからく」の意味や使い方をより深めるために例文をいくつかご紹介します。
・大人は須く(すべからく)子供の手本であるべきだ
(大人はぜひとも子供の手本であるべきだ)
・政治家は須く国民に対し誠実であるべきだ
(政治家は当然、国民に対し誠実であるべきだ)
・優秀な人材は須く評価されるべきだ
(優秀な人材は当然、評価されるべきだ)
・受験生は須く体調管理を徹底するべきだ
(受験生はぜひとも体調管理を徹底するべきだ)
「すべからく」を「須く」と漢字で覚えておくことで「当然」「必ず」といった正しい意味にたどり着くことができます。ぜひ参考にしていただけたらと思います。
まとめ
「すべからく」の意味や使い方はいかがでしたか?例文にあるように「当然、ぜひとも」を使った方が良さそうですね。
また、誤用が多い言葉ですので「すべからく」を使う場合にも、須く注意をするべきですね。