「よしんば」という言葉をご存知ですか?漢字では「縦しんば・縦んば」と書きます。どこか古めかしい響きのある言葉ですね。
この「よしんば」にはどのような意味があり、どのような使い方をするのでしょう。これらに加えて『縦』という漢字が当てられているわけについても解説していきます。
「よしんば」の意味と使い方
日常ではあまり馴染みのない「よしんば」ですが、もしかすると、小説や新聞記事などで使われているのを目にしたり、テレビでアナウンサーやコメンテイターが話すのを耳にしたりしたことがある人もいるかもしれませんね。
でもどういった意味があり、また使い方まではわからない人も多いと思います。
「よしんば」の意味
「よしんば」は日本固有の言葉「大和言葉」のひとつであり、古くから存在します。それでは「よしんば」にはどのような意味があるのかを解説します。
「よしんば」の意味は「たとえそうであったとしても。かりに。」です。
「よしんば」は「仮に〜だとしても」「たとえ〜だとしても」という意味で使われます。
「よしんば」の使い方
次は例文をあげながら「よしんば」の使い方を説明します。
・よしんばうまく描けたとしても、その絵をコンクールに出すつもりはない
上記の文章の意味は「仮にうまく描けたとしても、その絵をコンクールに出すつもりはない」となります。「よしんば」を「仮に」と置き換えると意味がわかります。
「よしんば」は仮定を表し、後に続く文章には反対の意味が伴います。前半「よしんばうまく描けたとしても」の部分が「仮に〜だとしても」という仮定部分であり、「その絵をコンクールに出すつもりはない」のように後半部分には前半部分を否定する内容が続きます。
例えば「よしんばうまく描けたとしたら、その絵をコンクールに出すつもりだ」のように「仮に〜だとしたら、〜する」といったように仮定に対して肯定的な使い方はしないので注意が必要です。
「よしんば」にはあくまでも仮定に対する逆説の意味が伴います。
・よしんば雨が上がったとしても、私は行かない
・よしんばその企画が通ったとしても、賛同できない
・よしんば褒められたとしても、嬉しくない
「よしんば」はこのように「仮に〜だとしても、…(仮定部分に対する逆説の文章)」と使うのが正しいのです。
「よしんば〇〇としても〇〇ない」とセットになります。
「縦しんば・縦んば(よしんば)」はなぜ縦なの?
さてここで、「よしんば」は漢字で表すと「縦しんば・縦んば」となりますが、なぜ「縦」という漢字が使われているのでしょうか。
一見「よしんば」と「縦」という言葉とは何も結びつかないように思います。そこで「縦」について調べてみました。
「縦(よし)」とは?
普段、私たちは「縦」というと、縦(たて)・横(よこ)の「たて」、縦横無尽(じゅうおうむじん)などの「じゅう」と読むことが多いですね。しかしそのほかに「よし」とも読みます。
「縦(よし)」の意味は、(仮定の表現を伴って)仮に。たとえ。よしんば。万一。と書かれています。
「よしんば」に使われる「縦」には、もともと「縦(よし)」自体に「よしんば」と同じ「仮に」という意味があり、仮定を表現する際に「縦(よし)」という漢字が用いられるのです。
「んば」とは?
また「よしんば」の「んば」は「〜ならば」というような意味合いで、条件を表す単語です。
仮定を表す「縦」と条件を表す「んば」を組み合わせ「よしんば」とすることで「仮に〜ならば」となります。
ただ、「よしんば」は後に続く文章には仮定部分に対する逆説が来るので、「仮に〜だとしても」となることを忘れてはいけません。
まとめ
「縦しんば・縦んば(よしんば)」は「大和言葉」の一つであると述べましたが、最後にこの「大和言葉」について簡単に触れておきます。
「大和言葉」とは日本固有の言葉です。日本語には漢語、外来語、和語があり、「大和言葉」はその和語にあたります。
つまり、漢語や外来語が日本に入ってくる以前から存在する日本で生まれた言葉のことを「大和言葉」といいます。
「よしんば」をなんとなく古めかしい雰囲気が漂よう言葉と感じるのは、それは「よしんば」が「大和言葉」であるためなのでしょう。
「よしんば」は否定的に使われる言葉ではありますが、日本固有の言葉には独特な趣を感じます。たまにはあえて、このような言葉を使用してみるのもいいのではないでしょうか。