「鑑みる」の意味と使い方!「顧みる」や「省みる」との違いも教えて

「鑑みる(かんがみる)」という言葉は間違った使い方が多い言葉です。よく「~鑑みる」や「~鑑みる」などの使い方を目にしますよね。

本来の使い方は「~に鑑みる」が正解で「~を鑑みる」は間違いです。

この記事では「鑑みる」の意味と使い方をはじめ、「顧みる」や「省みる」との違いについても解説していきます。

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鑑みるの意味

鑑みるは、もともとは「かがみる」と読まれていましたが、それが転じて「かんがみる」となりました。

鑑みるの意味は、「過去の例や規範などに照らし合わせる」「他の手本などを参考に考える」です。

「鑑」という漢字は「かがみ」と読み、姿や物の形を映し見る道具の「鏡」と同じです。また、「鑑」には「手本」「規範」という意味があります。

私たちはかがみをどのような目的で使うのでしょう。それは、かがみに映した自分の姿を元にして、おかしなところがあれば直すために使いますよね。

そこから「鑑」が「手本」や「規範」という意味を持つようになったと思われます。

例えば「あの人は医者の鑑だ」のように、「〜の鑑」という表現があります。これは「〜の手本」という意味を表しており、その人の行いが優れていて、他の人たちにとって良い手本となるような人物に対して用います。

「手本」「規範」という意味の「鑑」が動詞の「鑑みる」になると「手本や規範に照らし合わせて考える」の意味となります。

「鑑みる」はただ考えることではなく、これから検討する事柄を、先例や手本となるものに照らし合わせて、新たに考えることです。

鑑みるの使い方

鑑みるの使い方としては、「これまでの売り上げに鑑みて、次回の商品価格を下げることにした」のように用います。

鑑みるの意味通りに言い換えると、「これまでの売り上げに照らし合わせて考えた結果、次回の商品価格を下げることにした」となります。

これまでの売り上げが「手本」であり、その「手本」に照らし合わせて考えた事柄が次回の商品価格です。

「鑑みる」の使い方で少し難しい点は、「〜鑑みる」とするのが現代では一般的に正しいとされているのですが、「〜鑑みる」のように「〜に」を「〜を」と使う誤りが多くみられるところです。

これは「鑑みる」を単純に、考えるという意味で解釈しているからかもしれません。

例えば「失敗を鑑みる」であると、手本とするものがありません。失敗を何に照らし合わすのかがわかりません。

この場合はおそらく「鑑みる」を「〜を考える」という意味で使用しており、それならば「失敗を考える」となり、失敗そのものについて考えることとして意味は通じます。しかしながら、それは「鑑みる」の意味とは異なります。

「鑑みる」の意味を理解する上で大切なのは、過去に「手本」や「規範」となる例が存在するということです。

そしてその「手本」や「規範」に、これから検討する事柄を照らし合わせて考える。

それが「鑑みる」です。「〜を」ではなく「〜に鑑みる」と使うのが正しいとされていることを覚えましょう。

鑑みるの例文

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・この町の歴史に鑑みると、その土地の宅地開発はやめたほうがいいだろう
(この町の歴史を参考に考えると、その土地の宅地開発はやめたほうがいいだろう)

・子供たちに喜ばれたイベントに鑑みて、お祭りでの花火大会を企画した
(子供たちに喜ばれたイベントに照らし合わせて、お祭りでの花火大会を企画した)

・主催者側に警備の強化をお願いしたのは、前回の混乱に鑑みたからだ
(主催者側に警備の強化をお願いしたのは、前回の混乱に基づいて考えたからだ)

「顧みる」と「省みる」の意味

ここでは「鑑みる」と同様に考えるという意味を含む「顧みる」と「省みる」について触れていきます。

どちらも「かえりみる」と読みますが、それぞれどのような意味を持つのでしょうか。また「鑑みる」との違いについても解説します。

「顧みる」の意味と使い方

顧みるは、「過ぎ去ったことを思い起こし考える」「気にかける」「後ろを振り返って見る」という意味です。

顧みるの使い方を例文でご紹介します。

・子供の頃を顧みると、泥だらけになりながら遊んでいたものだ
(子供の頃を思い起こし考えると、泥だらけになりながら遊んでいたものだ)

・偉人の歴史を顧みると、その功績に驚いた
(偉人の歴史を振り返ってみると、その功績におどろいた)

・父親は若い頃、家庭を顧みない人だった
(父親は若い頃、家庭を気にかけない人だった)

・行列を顧みる
(行列を振り返って見る)

「省みる」の意味と使い方

省みるは、「自分のしたことを振り返ってよく考える」「反省する」という意味です。

省みるの使い方を例文でご紹介します。

・過去の過ちを省みて、今後の過ごし方を改める
(過去の過ちを反省して、今後の過ごし方を改める)

・テストでの間違いを省みると、簡単なミスに情けなくなった
(テストでの間違いを振り返って考えると、簡単なミスに情けなくなった)

「顧みる」と「省みる」の違い

「顧みる」は自分のことだけに限らず、他者・物事・出来事を含めて、過去を思い出し考えることです。

「省みる」は自分自身がしたことに限り、過去を振り返って考え、反省することです。

「鑑みる」との違い

「鑑みる」と「顧みる」や「省みる」との違いは、「鑑みる」は先例を手本とし、それと比較して次の何かを考えることであるのに対し、「顧みる」は過去を思い起こしたり、想いを馳せたりするだけで、その先をどうするかを考えるに至らないことです。

「省みる」も同様に、過去の自分を振り返り反省することにとどまり、それと比較してどうするかを考えるところまでの意味は持たないことです。

まとめ

「鑑みる」「顧みる」「省みる」、同じように過去を振り返り考えることでも、「過去の例を手本とし、それに照らし合わせて検討する事柄を考える」という意味を持つ「鑑みる」は、ほかと比べるとなかなか奥が深い言葉といえますね。

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