「檄を飛ばす」の意味と語源!誤用が定着した原因は「ゲキ」にある!

「檄を飛ばす」という言葉の意味をご存知でしょうか?
「げきをとばす」と読みますが、この言葉を聞いて、イメージするのはどのような状況ですか?

スポーツの試合でミスをして動揺している選手に「まだゲームは始まったばかりだ。気を落とすな。」と監督が檄を飛ばしていた。

自分のミスに落ち込んでいる選手に監督が励ましの言葉をかけている、そのような場面を思い浮かべたりしませんか?この場合、ここで使われている「檄を飛ばす」は「励ます」ことであると捉えてのことです。

上記のように「檄を飛ばす」の意味を「励ます」として使っている人が多いと思われます。ところが「檄を飛ばす」を「励ます」の意味とするのは間違いで、本来の意味は別にあります。ではなぜ「檄を飛ばす」にはこのような誤解が生まれたのでしょうか。

この記事では「檄を飛ばす」の正しい意味と語源についての説明をしていきます。また、なぜ「励ます」という意味での誤用が広まったのかを、その原因は「ゲキ」にあるのでは?という視点から解説したいと思います。

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「檄を飛ばす」の意味と語源

「檄を飛ばす」の本来の意味は、「自分の考えを広く人々に知らせ同意を求める・また、それによって決起を促す」という意味です。決起とは、ある目的のために決意を固めて行動を起こすことです。

また、その主張を知らせる方法は、口頭ではなく文書においてです。そこには「檄」の意味が関わってくるのですが、それについては次の語源でみていきます。

「檄を飛ばす」の語源

「檄を飛ばす」の「檄」とは、「自分の主張を述べて人々に同意を求め、行動を促す文書」のことを指します。「檄文(げきぶん)」ともいいます。

もともとは古代中国で、人民を招集、または説得するために木札に書いて出した文章のことでした。

そしてその「檄」を多くの人々に広めるために、各方面に急いで回すことを「飛檄(ひげき)」といい、これを語源とし「檄を飛ばす」という言い方が誕生したといわれています。

「檄を飛ばす」とは、本来は自分の考えを口頭ではなく、文書によって多くの人に知らせることで同意を求め、またその考えに従って行動するように促すことを表しています。

「檄を飛ばす」は誤用が定着している?

「檄を飛ばす」の本来の意味がわかったところで、ここでは誤用について説明したいと思います。

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「檄を飛ばす」を、本来の意味ではない使い方をしている例が多く見受けられるというデータがあります。

文化庁が発表した「檄を飛ばす」の意味について尋ねた、平成29年度の「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求めること」と答えた人が22.1%、本来の意味ではない「元気のない者に刺激を与えて活気づけること」と答えた人が67.4%という結果がでています。

本来の意味で使う人より、間違った意味で使う人の割合の方が多いという、逆転した数字がでていることがわかります。やはり、「励ます」という意味合いで使用している人が多いということになりますね。

誤用の原因は「ゲキ」にある?

それではなぜこのような誤用が生まれてしまったのでしょうか。その原因として「ゲキ」という言葉の存在が関係するのではないかと思います。

「檄を飛ばす」の「檄」という漢字、ほとんど目にしたことはないですよね?

この「檄」という漢字は常用漢字(1981年に内閣告示で公布された「常用漢字表」にある1945字の漢字。一般社会で使用する際の目安として示されたもの)として載っていないため、見ることも少ないでしょう。

そのため「檄を飛ばす」も「げき」や「ゲキ」のようにひらがなやカタカナで示されることもあります。

そのような「ゲキ」という言葉、正しくは木偏の「檄」ですがあまり見ることがないので、さんずいの見慣れている「激」という漢字と混同したために、「激励=励ます」という間違った意味がでてきたのではないでしょうか。

「激」にはそれ自体に「励ます」という意味があります。また「励まし、元気づけること」の意味で「激励」という言葉がありますね。

これらのことがきっかけとなり「ゲキを飛ばす」が本来の意味ではなく、「励ます」「激励する」という意味として定着するといった誤用が発生したのではないかと考えられると思います。

「檄を飛ばす」正しい使い方

最後に「檄を飛ばす」を正しく使用した例文をあげたいと思います。

「社長は各部署に向けて、新たな企業戦略について檄を飛ばした」

この文章の正しい解釈は「社長は各部署に向けて、新たな企業戦略についての社長の考えを記し、それに従うよう文書を回した」となります。

考えを文書で広く知らせ、その考えに賛同し行動を促すというのが正しい「檄を飛ばす」の意味です。

誤用のように、社長は社員を励ましているわけではなく、自分の考えに従ってそのように行動するようにと文書で求めているのです。

まとめ

「檄を飛ばす」が「励ます」の意味で使われることがあるが、それはあくまで誤用であると表記されている辞書もあるので、「励ます」の意味で用いるのは、単純に「励ます」や「激励する」という言葉にするべきでしょう。

また逆に「檄を飛ばす」を「自分の主張を文書で述べて人々に同意を求め、行動を促す」という本来の意味で使うのであれば、誤用の多い言葉であることを忘れずに、正しく理解してくれる相手かどうかを見極めることが必要となりそうです。

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