みなさんは「今年も企業による学生の青田買いが始まった」または「青田刈りが始まった」このような話を耳にしたことはありませんか?
学生の就職活動が始まるとこのような話題が聞かれるようになりますね。
上記の中で使われている「青田買い」「青田刈り」これらの言葉にはどのような意味があるのかご存知ですか?
似ている言葉ですが意味の違いがあるのでしょうか?
また「青田買い」の反対で「青田売り」という言葉もあります。
この記事では「青田買い」「青田刈り」「青田売り」これらの意味や違い、更に由来についてご紹介します。
「青田買い」「青田刈り」「青田売り」の「青田」とは?
まずは3つの言葉に使われている共通の「青田」の意味から紹介します。
「青田」とは、その名の通り青い田んぼのことで辞書には、
稲の苗が生育して青々としている田。 また、まだ稲の実っていない7月下旬ごろの田。
とあります。これを踏まえて、それぞれ3つについて解説をみていきましょう。
「青田買い」の意味
「青田買い」の意味は、
1.稲の収穫前に、その田の収穫量を見越して先買いすること。
2.企業が人材確保のため、卒業予定の学生の採用を早くから内定すること。卒業前の学生を実る前の稲に、能力を収穫量にたとえた語。
「青田刈り」の意味
「青田刈り」の意味は、
1.稲が未熟なうちに刈り取ること。
2.企業が人材確保のため、卒業予定の学生の採用を早くから内定すること。卒業前の学生を実る前の稲に、能力を収穫量にたとえた語。
(本来の言い方である「青田買い」の誤りが近年になり広まったもの)
「青田売り」の意味
「青田売り」の意味は、
1.稲の収穫前に、その田の収穫量を見越して先売りすること。
2.造成前の宅地や未完成の建物などを販売すること。
以上のように解説されています。
「青田買い」「青田刈り」「青田売り」の違いと由来
「青田買い」「青田刈り」「青田売り」この3つの共通点は、いずれも稲が実る前の収穫時期より早い田んぼに対して行われる行為であること、また、取り引きにおいて使われる言葉であることです。
ここからは辞典の解説を参考に、3つの違いについて考えていきます。また、由来についてもご紹介していきましょう。
「青田買い」「青田刈り」の違いと由来
稲の収穫時期前に、その田んぼではどれだけの米の収穫量を期待できるかを見越して先に買い上げるのが「青田買い」です。
これに由来し、米の買い取りを企業の新入社員採用のことに置き換えて、優秀な人材を確保すべく、その能力を見越して卒業見込みの学生を早期に採用することの意味としても「青田買い」を使うようになったと思われます。
一方「青田刈り」とは、稲が実っていない状態のまま、それを刈り取ってしまうことであり、ここには「青田買い」のように収穫量を見越してなどという意味はありません。
また「青田刈り」は戦国時代における戦法の1つともいわれており、敵国の田んぼから米になる前の稲を刈り取ってしまうことで、敵方を食糧不足に陥らせるという意図があったようです。
このことからもわかるように、「青田刈り」とは本来、先の利益を見越して早期に就職内定者を決定する「青田買い」の意味とは全く異なるため、その意味で使用するのは間違いです。
しかしながら、辞典では「青田刈り」を「青田買い」と同様の意味としているという事実も少なからず見受けられます。
青田という同じ単語が使われていることや、音の似通った響きからこのような間違いがうまれたのかもしれませんね。
「青田刈り」が「青田買い」の誤用とわかったところで、世間ではどのくらい誤用が多いかご紹介します!
文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、
B:会社が学生を青田刈りする
この2つの言い方のどちらを使うか尋ねてみると
平成16年度調査 | 平成26年度調査 | |
青田買い | 29.1% | 47.4% |
青田刈り | 34.2% | 31.9% |
上記の結果がでています。「青田刈り」の意味の説明で(本来の言い方である「青田買い」の誤りが近年になり広まったもの)とあるように本来の言い方は「青田買い」が正解です。
「青田買い」と「青田売り」の違いと由来
さて、「青田売り」ですが、こちらは収穫量を見越して収穫時期よりも先に売り出すという意味で、「青田買い」と逆になります。売り手と買い手の関係ですね。
また「青田売り」は、経済的に困難な農民が、稲のまだ青いうちから収穫を見越して先売りし収入を得たということに由来すると考えられ、それが転じて、土地や宅地を工事の完了前に販売する意味でも使われるようになったようです。
不動産売買において、この「青田売り」されたものを購入することを「青田買い」というそうです。
例えば、新築分譲マンションの売買に際し、マンション自体はまだ、未完成であっても、完成に先立ちモデルルームの公開、見学があり、それを参考に売買の契約を交わします。
これが「青田売り」と「青田買い」の関係性ということになります。
まとめ
「青田買い」「青田刈り」「青田売り」のそれぞれの意味や違い、由来についてご理解いただけましたか?
言葉には様々な誤用が存在します。「青田買い」と「青田刈り」もその一つです。正しいと思って使っていた言葉が、実は間違いであったという経験をしたことのある人も多いのではないでしょうか。
企業における優秀な人材を早めに確保することの意味で使うことのできる表現は「青田買い」ですので、くれぐれも「青田刈り」と誤用することのないように気をつけましょう。